落ち着いて食べてください

今日は社長がランチをおごってくれた。
ボーナスもない私たちのために、ランチくらい奢ってあげよう、
という気持ちなんだと思うが、場所はいつものうどん屋さん。

いや、ここはおいしいからいいんだけどね。
関西風の薄味で、うどんがモチモチしてておいしいのだ。

今日のセットはかき揚げ丼とうどんのセット。
私もおばさんも同じものをオーダーして食べ始めた。
が、途中でおばさんの箸の進み具合が遅くなった。
箸でうどんをつまんで、そしてまた戻す。
「どうしたんですか？」と聞くと「大丈夫・・・」と、
詰まったような声を出した。
社長が色々話しかけても、「はぁ」とか「えぇ」とか、
最低限の返事しかしない。
いつもならベラベラと人の言葉を遮っても、自分が話したがる
というのに。

何だかおかしい・・・。

と思ったら、「ちょっと・・・」といって、口を押さえて、
おばさんは駆け出して行ってしまった。

やっぱり気持ち悪かったんだ・・・。
胸をさすったり、口を押さえていたから、吐きたいのかな？
と思っていたのだ。

「風邪ひいたんですかね？」
私と社長は心配しながら、おばさんの戻ってくるのを待った。

なかなか戻ってこないので、様子を見に行こうかと腰を上げた時
おばさんが戻ってきた。
全部吐いたせいか、スッキリとした顔をしている。

「大丈夫ですか？」「無理して食べなくてもいいですよ？」
私も社長もおばさんを気遣った。

が、おばさんは笑って首をふった。

「違うのよ！気持ち悪かったんじゃなくて、かき揚げの玉ねぎが
のどに引っかかっちゃって取れなかったのよっ！おなかすいてて
がっついて食べたせいね〜！」

いい年して、がっついて食うなよ・・・。